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水中ドローンの活用法を解説!導入するメリットと注意点とは?

これまで水中での点検や調査といえば、専門の潜水士に依頼するのが主流でした。


しかし、潜水作業には常に危険が伴うだけでなく、外注コストの発生やスケジュール調整の手間など、幾つものハードルがありました。


そんな背景もあり、業界から注目されているのが水中ドローンです。


以前と比べて水中ドローンの性能は大幅に向上し、安全にリアルタイムで高精細な映像を確認できるようになっています。


老朽化が進むダムや橋脚の点検から、洋上風力発電施設の保守や水産業における網の確認まで、活躍の場は広がり続けています。


本記事では、水中ドローンの仕組みから実務での活用法、導入前に知っておくべきルールなどを解説していきます。


目次


水中ドローンの仕組みと基本情報



水の中は電波が届きにくいため、独自の通信・操作システムが必要となります。


まずは水中ドローンの仕組みや性能に焦点を当て、基本を整理していきましょう。


有線通信とロボットアームが支える水中操作


水中ドローンの大きな特徴として、機体と地上を繋ぐテザーケーブルと呼ばれる有線ケーブルがあります。


空のドローンは無線で操縦しますが、水中では数メートルで電波が遮断されるため、有線による通信が不可欠です。


このケーブルを通じて、操縦者のコマンドを機体に伝えると同時に、高画質でリアルタイムの映像を地上へ送り返します。


また、ケーブルがあることで機体が潮流に流されても回収できる、安全面でのメリットもあります。


さらに、産業用の機体にはロボットアームを装着できるものが増えています。


これにより、水底の堆積物を掴んで回収したり、絡まったロープを切断したりといった作業が可能になりました。


潜航深度やバッテリー性能の目安


一般的な産業モデルでは、水深100m~200m程度まで対応しており、ダムの堤体調査や沿岸部のインフラ点検には十分な性能を備えています。


バッテリー性能は、1回の充電で2~4時間程度の稼働ができるモデルが主流です。


ただし強い潮流の中での航行、ライトの常時点灯、ソナーやアームの使用は消費電力を増やすため、カタログ値の性能を発揮できない場合もあります。


移動速度は数ノット未満のため、高速移動は期待できませんが、低速で安定した動きが得意です。


業務で使う場合は、最大速度よりも、流れのある環境で姿勢を維持できる推進力や、実作業時間を確認することが大切です。


日本の海洋やダムなどで運用する際のポイント


日本の水中環境は、透明度の高い海ばかりではありません。


河川の河口域やダム湖、港湾施設などは、浮遊物が多く水が濁っているので、視界が悪くなりがちです。


このような環境では、カメラの性能だけでカバーするのは限界があるため、機体の姿勢を自動で保つ定点保持機能や、水流に負けない推進力が重要になります。


またダムや池などの閉鎖水域では、ケーブルが水中の立ち木や古い構造物に絡まる危険もあります。


よって機体性能を過信せず、現場の水質や地形に合わせた慎重なプランニングと、確かな操縦スキルが必要です。


この他にも、海水で使用した後のメンテナンスも不可欠です。


塩分による金属パーツの腐食を防ぐため、真水での洗浄や専用グリスの塗布といった、使用後のケアが機体の寿命を左右します。


水中ドローンを活用した点検業務の効率化



水中ドローンの導入によって、4K映像による詳細な記録や、ソナーを用いた不可視領域の可視化が可能になりました。


これはインフラ老朽化対策を迫られる建設・保守業界において、点検業務の効率化につながります。ここでは代表的な活用方法を挙げていきます。


水中ドローンの主な活用シーンと、導入による変化を整理した表も併せてご覧ください。


4Kカメラと高輝度ライトによるリアルタイムの調査


水中ドローンに搭載された4Kカメラは、人間の目では捉えきれない微細なクラックやボルトの腐食を、地上のモニターへ映し出します。


水中は太陽光が届きにくく、数メートル潜るだけで視界が失われますが、機体に装備された高輝度LEDライトが対象物を照らすため、客観的な映像をデータとして記録できるようになりました。


これまでは、作業後に撮影データを確認して、撮り直しが発生することも少なくありませんでしたが、水中ドローンの活用により、効率的な作業ができます。


また、リアルタイムで映像を共有できるため、現場の技術者が地上で映像を見ながら、調査対象の場所や角度の指示を、操縦者へ出すことも可能です。


ソナー技術を活用した水中での地形把握と距離測定


水が濁ってカメラでの撮影が難しい時に活躍するのが、超音波を使ったマルチビームソナーや音響イメージングソナーです。


これらは光の代わりに音を使って周囲をスキャンするため、視界ゼロの環境でも構造物の形や水底の起伏を映像として描き出すことができます。


その結果、橋脚の根元が洗掘されていないか、あるいはダムの底に土砂がどの程度堆積しているかなどを、濁った水の中でも正確に把握できるのです。


こうして複数のセンサー情報を統合することで、見落としの少ない調査が可能になります。


港湾設備やダム壁面など危険な水中点検を自動化


潜水士による水中作業は、減圧症や構造物への挟まれ、急な潮流の変化といった命の危険と隣り合わせです。


特にダムの取水口付近や入り組んだ港湾設備の奥深くなど、人間が潜るには危険が高い場所では、水中ドローンが威力を発揮します。


また、定期点検では同じルートを繰り返し確認し、映像や位置情報を蓄積することで、劣化の進行を比較しやすくなり、維持管理をより効率化できます。


さらに近年では、あらかじめ設定したルートに沿って機体が自動で潜航し、壁面の異常を検知するシステムが開発されており、点検の自動化も現実のものとなっています。


ロボットアームを用いた海底のサンプル採取と遺失物回収


水中ドローンの機体下部に装着されたロボットアームは、地上のコントローラーから直感的に操作でき、水底に沈んだゴミの回収や、土砂のサンプル採取を容易にします。


例えば、養殖現場では死んだ魚を取り除いたり、海に落ちた工具や部品を拾い上げたりするなどです。


これまでは、潜水士を呼ぶほどの緊急性がないと判断された場合は、放置されたり作業が後回しになりがちでしたが、ドローンがあれば日常業務に組み込むことができます。


また最新のアームは、掴むだけでなくカッターを取り付けてロープを切断したり、高圧洗浄ノズルを装着して、構造物の付着物を取り除いたりといった多機能化も進んでいます。


船舶の船底・スクリュー点検によるドック入りコストの削減


水中ドローンを活用した船舶点検は、船を陸に上げるドック入り(上架)の回数を抑えるのに効果的です。


これまでは、船底の付着物確認や塗装の剥離調査のために、数十万〜数百万円の費用をかけてドック入りさせる必要がありましたが、水中ドローンなら係留したまま、その場で状態確認が可能です。


また、複雑な形状を持つスクリュー周りや、舵周辺の損傷チェックでも、高精細な映像で確認できるため、プロペラの欠けや異物の巻き込みを正確に捉えることができます。


実務活用の前に知っておきたい運用ルール



水中ドローンを実務活用するには、法令遵守と安全管理が重要です。ここでは運用時のルールを解説します。


潜水士免許の必要性と水中ドローン運用のルール


水中ドローンを操縦するために、潜水士免許を取得する義務はありません


潜水士免許は、人間が潜水器具を使用して水中作業を行う際に必要な資格であり、船の上や陸上からリモコンでドローンを操作する場合には適用されないからです。


これにより、従来は潜水士に頼らざるを得なかった点検業務を、自社のスタッフで内製化することが可能になりました。


ただし、注意が必要なのは潜水士との役割分担です。


水中ドローンは調査や撮影には優れていますが、複雑な溶接や大規模な障害物の撤去には向かないので、潜水士の手が必要な場面が多くあります。


法的に免許が不要だからといって、すべての水中作業をドローンに置き換えるのではなく、ドローンで下見を行ってから、必要な時だけ潜水士を派遣するなど、バランスの取れた運用が求められるでしょう。


港湾や河川での使用時に必要な許可申請と届出


水中ドローンは、使用する場所によって管理者の許可が必要となることがあります。


例えば、港湾区域内で運用する場合は港則法に基づき、海上保安庁への届け出や港湾管理者への使用許可申請が必要になることがあります。


なかでも船舶の往来が激しいエリアでは、有線ケーブルが他船のスクリューに巻き込まれるなどの事故を防ぐため、警戒船の配置や事前の周知が求められることもあります。


また、ダムや河川、貯水池などで使用する際は、その場所を管理している自治体や河川事務所、あるいは水利組合などの許可を得るのがマナーです。


漁業権が設定されている海域では、漁協との事前の調整も欠かせません。


こうした手続きを怠ると、不法侵入や業務妨害と見なされることもあるため、「どこで、誰が、何のために潜らせるのか」を明確にした計画書を作成し、関係各所とスムーズなコミュニケーションを図ることが大切です。


水中ドローンの紛失を防ぐ対策



水中ドローンの運用で注意したい別の点は、機体紛失を防ぐことです。


機体紛失により、ドローンの再購入だけでなく、作業の遅延や回収コストも発生します。これを避けるには、あらかじめ起こりうるトラブルを想定した運用が不可欠です。


ここでは、代表的な環境リスクと、事故を防ぐための回収対策を整理します。


潮流の速さや水の濁度による影響と対策


潮流が速い現場では、水中ドローンが流されやすいため、目標物の前で静止することが難しくなります。


無理に逆らって進もうとすると、バッテリーを急激に消耗させるだけでなく、機体が制御不能になる可能性もあり、作業に支障が及ぶことも考えられます。


それで事前の海図確認や、現場での浮遊物の流れによる流速の把握など、潜航の可否を的確に判断するための撤退基準を策定することが不可欠です。


また、水の濁りがひどいと、壁面や障害物に機体をぶつけてしまい、モーターの故障やカメラの破損を招く恐れがあります。


こうした視界不良の現場では、前述したソナーを活用し、デジタル上の視界を確保しながら慎重に操作する技術が求められます。


ケーブルの絡まりや操作制限への対策


水中ドローンの運用で重要なのが、テザーケーブルの取り回しです。


常に長いケーブルを引きずって動くため、水中の構造物や自機のプロペラに絡まるスタックの危険が付きまといます。


特に潮流がある場所では、ケーブルが水の抵抗を受けて大きくたわみ、機体が思うように進まなくなる問題が発生するため、事前の潜航ルート策定と進入限界点の設定が欠かせません。


こうした問題への対策として、ケーブルにフロート(浮き)を配置し、海底の岩礁や泥に接触しないように浮かせて管理することがあります。


また、操縦者とは別にケーブルの送り出しや巻き取りを行う、専任の補助者を配置することも推奨されます。


チームで連携し、常にケーブルがどこを通っているかを把握し続けることが、事故を未然に防ぎ、スムーズな調査を実現するコツとなります。


故障などの緊急時に機体を浮上させる対策


万が一、モーターの故障や機体への浸水、通信途絶といった緊急事態が発生した場合、機体を回収する手順を確立しておくと、パニックにならずに済みます。


多くの産業用水中ドローンには、通信が切れた際に自動でモーターを停止させ、正浮力によって海面へ浮上させる安全機能が備わっています。


しかし、潮流が強い場所では浮上したポイントが投入地点から大きく離れる可能性があるため、機体を発見するためにGPS信号の発信機や、夜間でも視認しやすいフラッシュライトの装備が推奨されます。


また、機体が動かなくなった最終手段として、テザーケーブルを慎重に手繰り寄せて回収する訓練も必要です。


ただし、強引に引くとケーブルの断線やコネクタの破損の原因となり、回収不能になる恐れがあるため注意しましょう。


こうしたトラブルを想定し、予備の回収用フックを備えた別の機体を用意したり、機体保険に加入しておくことも、紛失への対応策として有効です。


産業分野で広がる水中ドローンの役割と今後の市場展望



水中ドローンの国内市場は、2020年には20億円程度でしたが、2025年には62億円になり、2026年はさらに上昇すると予想されています。


ここでは、産業分野での費用対効果や人材育成、そして今後の市場展望を解説します。


水中生物の生態調査とサンゴ礁への非接触アプローチ


水中生態系の調査では、接触を避けつつ長時間の観察が可能な、水中ドローンの使用がスタンダードになりつつあります。


ドローンによる調査は、ダイバーの呼気が発生しないため、警戒心の強い魚類を驚かせず、自然な生態をクリアな視界で長時間記録できるのが特徴です。


また高精度なホバリング技術により、サンゴの群体など壊れやすい自然環境に接触するリスクを抑えた近接撮影も可能です。


これにより、水深や水温データと映像を紐づけた正確な生息記録をつけることができ、長期的な環境変化をモニタリングするための貴重なデータを得られます。


エンターテインメント映像制作における水中撮影の自由度向上


映画やテレビ番組、観光PR動画などの制作現場での水中ドローン使用は、従来のダイバー撮影では困難だったアングルや演出を可能にします。


潜水時間の制約がないため、納得がいくまで粘り強く撮影を継続でき、4K高解像度による没入感のある映像を収録することもできます。


さらに、水中のリアルタイム映像を地上モニターへ伝送できるため、監督が地上でアングルを確認しながら操縦者へ指示を出すといった、効率的な撮影も可能です。


YouTubeでのライブ配信やイベント会場でのリアルタイム上映など、水中と地上をリアルタイムで繋ぐ新しい映像コンテンツの活用も広がるでしょう。


ドローンを使った撮影については「ドローン撮影で失敗しない許可・承認申請と現場でのトラブルを防ぐ方法」で解説しています。


インフラ点検や水産業での費用対効果


港湾設備やダムの定期点検を潜水士に依頼した場合、潜水士数名と警戒船の配置などで、1日の作業につき50万〜80万円程度の外注費が発生することもあります。


これに対し、自社で水中ドローンを運用すれば、日々の点検にかかるコストは、スタッフの人件費のみに抑えられます。


仮に300万円の機体を導入し、年に4回の定期点検と随時の異常確認を内製化した場合、1年〜2年で機体購入費を回収できる計算になります。


さらに水産業の現場では、網の破れや死魚の回収にドローンを活用することで、大規模な食害や病気の蔓延を未然に防ぎ、数百万〜数千万円規模の損失を回避することも期待できます。


このように水中ドローンの導入は、外注費を削るだけでなく、大きな事故や被害を未然に防ぐことになり、会社の大切な設備や資源を守る事にもつながるのです。


スクールや講習で習得すべきスキル


機体の性能が向上した一方で、現場での運用ミスによる損失を防ぐ教育の重要性が高まっています。


昨今では、多くの企業が水中ドローン導入時に、独自の安全基準の策定や公的資格に準じたオペレーター講習を実施しています。


そのためドローンの操作方法だけでなく、潮の流れを読み解く知識や濁った水中での距離感覚、そしてケーブルがスタックした際の対処法など、実務に特化したスキル習得が必須となっています。


こうしたスキルや知識の取得は、独学で得ることもできますが、現場の最前線で実務をこなしている経験者からの指導を受けることも重要です。


水中という特殊な環境下では、急な潮流の変化や視界不良など、教科書通りの操作が通用しない場面が多々あります。


しかしプロの指導を受けることで、危機回避のコツや機体を回収するノウハウの習得に繋がります。


ドローンスクールの選び方については「大阪のドローンスクール選びで失敗しないコツとは?プロが教える3つの条件」で解説しています。


水中ドローンに期待できる今後の可能性


水中ドローンの可能性として大きな注目を集めているのが、カーボンニュートラル実現の柱となる洋上風力発電のメンテナンスです。


海底ケーブルや風車の基礎部分は、常に厳しい海象条件にさらされており、定期的な点検が法律で義務付けられています。


これら広大なエリアを効率よく調査するため、AIによる画像診断や自律航行機能を備えた水中ドローンの導入が検討されています。


また、防衛や災害救助といった公共分野、深海資源の探査といった研究分野でも、水中ドローンの多角的な活用が進んでいます。


水中ドローンで現場を効率化するためのご提案


この記事で解説してきた通り、水中ドローンは潜水作業の安全性を飛躍的に向上させ、コスト削減やDX化を実現する強力なツールです。


潜水士免許がなくても運用できる一方で、濁った水中での視界確保や潮流への対応、そして有線ケーブルの管理など、特有の技術と知識が求められます。


ドローンプラスでは、最新の産業用水中ドローンの選定アドバイスから、現場で即戦力となるための実務講習、さらには点検・撮影の請負まで、お客様のニーズに合わせたトータルサポートを提供しています。


水中ドローンのビジネス活用を検討されている方は、ぜひ一度ドローンプラスへご相談ください。



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